『スコットランド西方諸島の旅』


スコットランド西方諸島の旅 (中央大学人文科学研究所翻訳叢書)

スコットランド西方諸島の旅 (中央大学人文科学研究所翻訳叢書)


このたびサミュエル・ジョンソンによる上記の本が、中央大学人文科学研究所「S・ジョンソン研究チーム」の4人の研究員による5年にわたる作業によって完成、出版された。


出版されてすぐに購入して読んだが、うう……読みやすい(T_T)←感涙。


これだけ訳文が読みやすいと、何の苦労もなくスイスイ訳したんだろうと思う読者もいるかもしれないが(いないか(^^ゞ)、こういう本を訳すのがどんなに大変か、わたしも多少は想像がつくつもりだ。


じつをいえば、わたしはS・ジョンソンのことはあまり知らなかった。あまりにも有名だけど、どういう人なのか、具体的なところはほとんど知らなかったのだ。このたび本書を読んで、わたしはこの人が好きになった。ジョンソンは、「その国のことを知るには、人々の暮らしぶりをみなければ」と言い、教育の力を信じ、どうやったら人々の暮らしがよくなるかと考え、迷信にみちていた当時、自分で見、考えずして軽々しく信じることを警戒した。そしてジョンソンはばりばりの平和主義者なのだ。


スコットランドが置かれた状況を率直に書いたため、スコットランド人の中にはこの本を批判する人たちもいたようだが、わたしが今日の目から見るかぎり、ジョンソンがスコットランドを馬鹿にしたり、憎まれ口を叩いたりしているようにはまったく思えない。彼はスコットランドの人々が少しでも暮らしやすくなるにはどうすればいいかを懸命に考えているのだ。だいいち、ボズウェルその人がスコットランド人ではないか。


ジョンソンとボズウェルの関係も、わたしにはうらやましく、好ましいものに思えた。親交があって伝記を書いたという関係から、ゲーテエッカーマンに対比させて考えてしまうが、ゲーテエッカーマンの場合は、わたしはときとしてゲーテが憎らしく、エッカーマンが不憫に思われたが、ジョンソンとボズウェルの関係はそれとはまるで違う(まあ、エッカーマンとボズウェルの出自も全然違うわけだけれど)。

こういう本がこんなきちんとした、しかも読みやすい訳文で読めるなんて、ほんとにありがたいことだ。