カンディード

カンディードヴォルテール作、植田祐次訳、岩波文庫
『『カンディード』<戦争>を前にした青年』水林章著、みすず書房


カンディードのことは、みなさん(読んでない人も(^^ゞ)、なんとなくご存知のことと思います。内容を簡単に要約するのは難しいのですが、有名な作品ですよね。


わたしもこれまで、必要に応じてあちこちつまみ読みしたことはあったのですが、読み通す動機はありませんでした。が、このたび思うところあり、ぼちぼち通読しました。


つまみ読みをしていたときは、(当然ながら)、それほどおもしろいとは思いませんでした。ヴォルテールの同時代に生きる人にしかわからないローカルネタや、ヴォルテールの饒舌さには強い印象を受けたのですが…。まあ、それだけでした。


しかしこのたび通読してみて、ヴォルテールの「本気」に圧倒されたのです。これは、ただごとではない、と思いました。いったいヴォルテールは、何をそれほど本気になっているのでしょうか。彼が言いたいことはいろいろあるのだと思いますが、ちょっとメタな感じで言うなら、奇しくも(というより当然、かも知れませんが)水林章さん、みすず書房の本の帯にある、「神に逆らって考えること」なのだろうと思いました。


欧米の少し歴史的な文章を見ていると、「自由思想」ということばがときどき出て来ますが、今日の素朴な感覚では、「自由」ということばはちょっと一般的すぎて、「?」なのではないでしょうか。ここでいう「自由」というのは、「宗教の教えからの自由」なのですよね。そういう「過激な思想」に対して、「ヴォルテール主義」というけなし言葉もあるらしく、今日のわたしたちにはピンと来なくなった、シビアな争点だったことが垣間見えます。


水林さんのご著書も、実は、少し前に読もうとしたことがあったのですが、『カンディード』の中から短い二カ所だけを抜き出して、細かく読み込んで行くというスタイルだったので、そのときは「おもしろいけど…ちょっと細かすぎる」と感じて、途中であいまいになってしまいました。


しかしこのたび、『カンディード』本文を通読し、ヴォルテールの本気に圧倒されてから水林さんの著書を再読すると、とても面白く、引き込まれるように読みました。「細かい」読みが、現に読解している部分だけでなく、『カンディード』のほかの部分にも共鳴するのですよね。


もしもこれから『カンディード』を読もうという方はいらっしゃいませたら、その直後に水林さんの本も読むことをお薦めしたいです。

……このたび冒頭に掲げたニ作を読んで、いろいろ考えさせられたのですが、具体的に書くのは難しいですね(^^ゞ 思ったことはたくさんあったのですが…しかし、うまく書けないからと言って書かないでいると、何も書けないので、書いてみました<(__)>

『カンディード』<戦争>を前にした青年 (理想の教室)

『カンディード』<戦争>を前にした青年 (理想の教室)