『フラックスへの反論』フィロン著 秦剛平訳

フラックスへの反論・ガイウスへの使節 (西洋古典叢書)

フラックスへの反論・ガイウスへの使節 (西洋古典叢書)


これもまた秦氏の訳業だ。フィロンナザレのイエスと同世代人で、国際都市アレクサンドリアの大富豪一族のメンバーであり、哲学者として尊敬されていた人物だそうだ。ギリシャ的教養を身につけたユダヤ人である。フィロンの一族がどれぐらい金持ちだったかを知るめやすとして、ある研究者は、フィロン一族を十九世紀末のロスチャイルド家になぞらえているそうである。


で、この『フラックスへの反論』に何が描かれているかというと、一世紀のアレクサンドリアで起こったユダヤ人迫害のありさまだ(当時の人口スケールでは、十分、大量虐殺と言ってもいいと思う)。フィロンはあまりユダヤ的な人ではないので、この著書もある意味中途半端な内容なのだろう。しかしそれでも迫害の実態は伝わってくる。


この場合、ユダヤ人が迫害されたのは「よそ者だから」だ。


「よそ者」であることと「主殺し」の烙印とが、どのように絡まり合っているのかは、わたしにはまだよくわからない。しかしともかく、ユダヤ教キリスト教の因縁は思ったより深そうだ。というか、キリスト教は、二重の意味で、ユダヤ教から生まれたのだなぁ〜と思う今日この頃なのである。


(この項つづく。次回は「三位一体への道」)