『痴愚礼賛』エラスムス著

痴愚礼讃―附 マルティヌス・ドルピウス宛書簡

痴愚礼讃―附 マルティヌス・ドルピウス宛書簡


エラスムスの『痴愚礼讃』(と、マルティヌス・ドルピウス宛書簡)を読んだ。まず、このような本が、このようなすてきな装丁で出版されたことを喜びたい(^^ゞ。


それから、この本は、はじめてラテン語から邦訳されたものだという点も特記に値する。この邦訳版は、1979年刊行のNorth-Holland版エラスムス全集を底本としている。この底本は1511年刊行以来8版にわたる刊行書すべてを比較して校訂・編集されたもので、現在もっとも信頼できる版本なのだそうだ。


これまで邦訳されていたのは、仏訳版からの重訳で(重訳というプロセスのヤバさについては、以前、『ロウソクの科学』に関してちょっと述べた)、原文とのずれがはなはだしいそうである。


つまり、これまで日本において、「エラスムスの痴愚礼讃(とか愚神礼讃とか痴愚神礼讃とか)」について何か語ったことのある人は、

ラテン語原文を読んだ(この分野の研究者はみなこれにあたるだろう)
2仏訳からの重訳版を読んだ(たいがいの人はこれにあたるだろう)
3大学受験のときに世界史をとったから名前ぐらいは知っている(わたしはこれだった(^^ゞ)
4その他(どんな場合もその他の可能性はあるのだ)

の3通り(その他も入れると4通り(^^ゞ)に分けられるわけだ。


しかし今後は、ラテン語の信頼できる底本からの邦訳を(しかもおしゃれな装丁で)読むことができるわけで、わたしのようにラテン語で本を一冊読むなんて考えられない人間にとっては、ほんとにありがたいことである。

(明日に続く)