『コペルニクス革命』トマス・クーン著 常石敬一訳

コペルニクス革命 (講談社学術文庫)

コペルニクス革命 (講談社学術文庫)


いまごろ〜だが、クーンの『コペルニクス革命』をめくりはじめたところ、前書きの項に次のようにあった。

専門的な論文でたまになされる以外は、科学と思想史との組合せというのは異例なことである。したがって、はじめはその組合せは不似合いなものに見えるかもしれない。しかし、けっして本質的に不似合いということではない。科学的概念というのは観念であり、その意味でそれらは思想史の主題である。それらがこのような形で取り扱われることはほどんどなかったが、それは単に科学上の原資料を扱うための技巧的訓練を受けた歴史科がほとんどいなかった、ということによるのであろう。


今日のわたしたちは、科学史をやるのに思想史をやるのは当たり前だと思っている。しかし、クーンがこれを書いた1956年には、それは決して常識ではなかったのだ。


ざっと半世紀前、マージョリー・ニコルソンやトマス・クーンは、大きな気概を持ってこういう作業に取り組んでいた。そのタイムスパンを知ったことが、まずはひとつの収穫だ。