『ロウソクの科学』

先日書いたアルマゲストの項で、「重訳」という言葉が出てきたので、わりと最近感じたことを書いてみたい。

ファラデーの有名な『ロウソクの科学』はたくさんの訳が出ているが、岩波文庫版と角川版について、ちょっとだけ原文(もちろん英語)と対照してみる機会があった。

ロウソクの科学 (岩波文庫)

ロウソクの科学 (岩波文庫)

で、岩波版なのだが、これがドイツ語からの重訳になっている。そして詳しく見てみると、原文のニュアンスや意図が相当ずれているところがあり、ファラデーの思考や感性をきちんと追うには適さないと思った。英語からドイツ語に訳にした段階で問題があったのではないかという印象を受けた。


それに対して角川版は

ロウソクの科学 (角川文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

は、丹念に英語のニュアンスをひろっていて、納得した。


年代的にこれより後に出た講談社

ロウソクの科学 (講談社文庫 ふ 23-1)

ロウソクの科学 (講談社文庫 ふ 23-1)


や旺文社版

ロウソクの科学 (旺文社文庫 562-1)

ロウソクの科学 (旺文社文庫 562-1)


は、わたしは見ていないけれど、さらに良くなっているんだろうなと推測する。


岩波版は、なぜわざわざドイツ語から訳したのかと解せない面もあるが(わたしはドイツ語が全然だめなので(^^ゞ)いろいろな事情があったのだろう。ともあれ、重訳はやはり怖いと思わされた。だからこそ、アルマゲストも、やっぱりギリシャ語から訳したものが早く出て欲しいと思う。