『磁力と重力の発見1』山本義隆著、みすず書房

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世


ざっと二年近く前に出たこの本、買ってはあったけど、三巻もあるのでなかなか読み始められなかった。井上ひさし氏は「あまりにも面白くて一気に読んだ」と言っていたから、読み始めてしまえばすぐなのだろうと思いつつ、やはり時間がとれなかった。


それで、一月中旬に風邪で寝込んだとき、「いまだ!」とばかり読み始めたのだが、風邪はたった二日でころっと治ってしまったため、一巻しか読めなかった。しかしわたしはすっかりこの本に魅了され、その後、5分、10分の時間をかき集めて、ようやく第三巻まで読了した。


読んでみて、「もっと早く読めば良かった」という気持ちと、「今まで先延ばしにしておいてよかった」という気持ちが半々、いや、たぶん、後者のほうが大きい。


というのは、この間わたしはちょびっとラテン語をかじったので、山本氏があちこちで念のために書き添えてくれるラテン語の単語ぐらいは「ふむふむ」と読むことができたから。それと、『中世思想原典集成』をあちこちめくっていたおかげで、山本氏のお話を「ふーん」と聞くだけでなく、「うむ」と頷けるケースが多かったからだ。たったそれだけのことでも、わたしにとってはとても嬉しかった。


ちなみに、山本氏はラテン語をある程度ちゃんとやらなくてはと、二年半、語学学校に通ったそうである。


また、執筆中にいろいろな本(資料)が邦訳出版されたのはありがたかったと「あとがき」で書いておられるが、とくに『中世思想原典集成』に対しては

しかしなによりも役に立ったのは、平凡社から『中世思想原典集成』の出版が始まり、全20巻の完結を見たことである。


と述べておられる。やっぱり、『中世思想原典集成』はすごいプロジェクトだと思う。


ところで、わたしが中世に興味をもったそもそものきっかけは、自分が何も知らないことだった。(一応、世界史で大学受験したので最低限のことは知っていても、有機的な知識としては何もなかったといえる。中世といわれても頭真っ白)。それで、阿部勤也氏の本など読んではみたものの(民衆の中世といった切り口)、それだけでは、何かがわからない(その「何か」については、また別の話題になるのでここではパス)。


中世は暗黒時代などと言われる。普通、考古学で暗黒というときは、資料が何も出てこない場合である。ところが中世については、モノはぎょうさんあるわけで、考古学的意味での暗黒ではない。なんで、中世はそこまで悪く言われるの? という疑問が、中世への興味の出発点だったのだ。


中世が悪く言われる理由は、(落としどころとしては)「中世スコラ学の否定、もしくはそれを乗り越えようとする努力から近代が生まれたから」といったあたりなのだろう。しかしわたしはそれを、具体的な局面で実感したかった。


山本氏もここらへんのことについては手を変え品を変え、何度も語っておられて、わたしはたいへん共感した。いちばん具体的に「そうだよね!」と思ったのは、ホイッテイカーの名著(わたしはいまでも名著だと思っているし、それは山本氏も同じなんだろうと思う)『電力と磁力の歴史』の記述だ。


書きかけ(^^ゞ