『Two Hands』レオン・フライシャー
舘野氏は両手から片手への変化だが、レオン・フライシャーは逆に、左手の世界から両手への奇跡のカムバックだ。
フライシャーはもちろん、三十五年を経て両手で弾けるようになったことへの「神への感謝」に溢れているのだろう。しかしその一方で、この間の経験から、「手の数とか指の本数とかは本質的ではない」と語ってもいるのだ。
どの曲も静かで豊かで深くて、若い頃の演奏(あれはあれでいいのだ!^^;)とは、同一人物が弾いたものとはちょっと思えないが、この間にあったことを思えばそれも当然だろう。レオン・フライシャー、すごい人だ。
このアルバムのなかで、とくにわたしがハッとさせられたのは、スカルラッティ。というのも、わたしにはスカルラッティならこの人!というお気に入りのピアニストがいるからだ。これまでは、誰のスカルラッティを聞いても、「やっぱりツァハリアスよね……」などと内心思っていたのだが、うむ、フライシャー、おぬしなかなかやるな。
- アーティスト: Scarlatti,Zacharias
- 出版社/メーカー: Angel Records
- 発売日: 1993/05/28
- メディア: CD
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ツァハリアスのスカルラッティが光なら、フライシャーのスカルラッティは風……。
左手のためのピアノ曲ということに話を戻そう。ここに三人のピアニストがいる。両手の世界から左手の世界に(当面)入った舘野氏、そして左手の世界から両手の世界に戻ってきたフライシャー、両方の世界に住むウゴルスキ。三人三様に、音楽に両手も片手もないと、演奏を通じて語っているような気がする。