野村達明『ユダヤ移民のニューヨーク』(山川出版社)
ユダヤ移民のニューヨーク―移民の生活と労働の世界 (歴史のフロンティア)
- 作者: 野村達朗
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 1995/10
- メディア: 単行本
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仕事で出てきたほんの一言の背景がよくわからなかったので、Sakinoさんにブレインストーミングをお願いしたら、「ここらへんかな?」と紹介してくれたのがこの本。
非常に感銘を受けた。知っていたはずのアメリカの歴史、実は何も知らなかったのだということを改めて思い知らされた。アメリカの歴史もそうだが、(旧約聖書にさかのぼる歴史はおくとして)ロシア・東欧からアメリカへ、エリス・アイランドからニューヨークのロワーイーストサイド、そして郊外へというユダヤ人のダイナミックな流れが、定量的に(具体的数字は読むそばから抜けていくのだがσ(--;))見えてくる。
二十世紀前半のアメリカに関連する本を読んだり、映画を見たり、何か考えたりするなら、はずせない本だと思う。
たとえばわたし自身、この本を読んでいて、これまでモノクロだった映像がカラーになるような経験をした。『ユダヤ移民の……』も終わり近い p.194 に、次のような記述があったのだ。
たとえばドレスメーキングやそれに関連した業種は
伝統的に女性の職業であった。そこではミシン操作
職だけでなく、裁断をのぞくほかのすべての仕事を
女性がほぼ独占しており、女性は権威と威信のある
地位にまで上昇することができたのある。
これを読んだとき、1939年のある情景がぱっと思い出された。それは『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(新潮文庫版では、『人はなぜエセ科学に騙されるのか』)の序文で、セーガンが子ども時代の思い出を語る部分である。セーガンの父親は洋服の裁断をやっていて、それを女工さんたちが縫い上げていたのだ。セーガンって、ユダヤ人だったの?(いまごろ〜〜(^^;)☆\バキ)
調べてみたら、セーガンのお父さんはやはり a Jewish garment worker だった。セーガンがさらりと描いてみせた家庭の情景、周囲の人々のようす……それらが、『ユダヤ移民……』に描かれる世界を背景として、生き生きと浮かび上がってきた。セーガンが、自分にとって一番最初の、そしてもっとも重要な教師だったと言うの両親は、まさに1920〜30年代ニューヨークの衣服労働者の文化の中にいたのだ。
関連文献をいくつか挙げておく。
- 『金のないユダヤ人』
- マイケル・ゴールド著 坂本肇訳 三友社出版
まさにニューヨーク・イートサイドの東欧系ユダヤ人
家庭の自伝的小説。『ユダヤ移民の……』の俯瞰的記
述と合わせて読むと面白さ倍増!
都会的で資本主義的で国際的なユダヤ人
中西部の農村に住む本当のアメリカ人
という、仮想的対立構図がよくわかる。ここで仮想的
というのには二重の意味がある(とわたしは思う)。
ヘンリー・フォードのような人間がこの構図にのっか
ってユダヤ人を攻撃するのはお笑いだが、歴史は笑っ
てはすまされない事実に満ちている。
この二冊は、ずいぶん前に入手し、いつも目次だけ見て
「おもしろそー、読まなくちゃーー」と思うのだが、分
量が多くてなかなか通読できない。目次を見ながらその
都度参考にする本ということか(^^ゞ